映画

『花の夢 - ある中国残留婦人- 』(東志津 監督)に続いて、「満蒙開拓」を考える映画『嗚呼 満蒙開拓団』(羽田澄子監督)が上映される(6月13日から岩波ホール)。昨年10月に東京国際女性映画祭で先行上映され、2008年キネマ旬報文化映画ベストワンになった作品である。羽田監督は大連出身。いってみれば、「ご自分の問題」である。
先行上映のとき見逃したので試写会に行った。
羽田監督らしく、端正で丹念な映画である。
残留孤児国家賠償集団訴訟東京地裁判決(07年1月30日)から始まる。元中国残留邦人たちの国家賠償訴訟は当会会長の鈴木則子さんたちが01年12月に提訴。以後全国的に広がっていく。この訴訟は、敗戦時、そして、戦時死亡宣告や自己意思残留者認定による切捨て、国交正常化以後も積極的に帰国のための措置をとらず却って親族の同意などの条件をふして帰国を妨害、帰国後も十分な支援策をとらなかったことなど、何度も「棄民」してきた国の対応を問題にしている。
映画はこのうち最初の「棄民政策」(訴訟では損害賠償の「先行行為」と位置づけられている)に焦点をあて、「満蒙開拓団」とは何だったのかを考えさせる。
置き去りにされた「中国残留孤児」「中国残留婦人」になった人、「中国残留孤児」を育ててくれた養父、八路軍に留用されて帰国した人、当時の兵士や軍人家族などさまざまな人が登場。そして、8万人もの死者・・。国策として送出された「開拓団」の人々に、日本国が何をしたか、何をしなかったか、を明確に浮かび上がらせる。
映画に出てくる「日本人公墓」の周辺には、残留を余儀なくされた日本人がたくさん住んでいた。当会の会員にも、「毎日このお墓の前をとおって畑に行った」「暗い気持ちも少しは明るくなった」という元「中国残留婦人」がいる。
08年4月から、中国帰国者への地域支援事業が始まった。この輪を広げるために多くの方々にみていただきたいと思う。
製作・配給:自由工房 http://www.jiyu-kobo.com/