自らの意思で中国に生きる人

「中国残留邦人」の帰国の支援等の活動をしていると、ともすれば、主体的に中国での生活を選択している「中国残留邦人」のことを見逃してしまいがちである。
2008年10月18日付の東京新聞で、「植林活動で恩返し 中国残留孤児女性 内モンゴルで 月末に来日し講演」という記事があった。
 彼女は70歳になる「中国残留日本人孤児」。日本の親族が判明した後も中国・内モンゴルに残り、沙漠の緑化に取り組んでいる。敗戦当時7歳の彼女は、「当時、私たちには侵略の感覚はなかった。しかし、後に歴史を学び、侵略と分かった」と言う。養母は深い愛情を注いでくれたし、学校でも、日本人である彼女を差別することもなかった。奨学金も出してくれた。こうして彼女は「恩返しに、中国の子どもたちのために頑張りたい」と勉学に励み、高校の教員になったという。70年代以降、教え子たちの家庭が学費も出せない貧困状態にあることに気付いた。草原の沙漠化で農業収入が減っていたからだ。退職後沙漠での植林活動に尽力。10月末に来日し、講演を通して協力を呼び掛けるという。
 
この記事は色々と考えさせる。「中国残留邦人」というと、「帰国したくても帰国できない人」というイメージが強い。今も少なくない人が中国で生活している。その多くは、本当は帰国したいがさまざまな理由で留まらざるを得ない人だと思う。だが、少数ではあっても、自らの意思で、“自分自身の生を生きる”として中国に留まっている人もいるのだ。中国人の研究者呉万紅さんの『中国残留日本人の研究』(日本図書センター 2004年)は、このことを指摘している。この本をまた読んでみようと思う。同時に、中国に留まる人にも、日本政府は何らかの補償をすべきではないかと思うのだ。