新学期

4月。新しい学校へ、新しい学年へと、気持も新しくなるような希望に燃える季節。この春、帰国者の子どもたちの進学、進級にもさまざまなドラマがあった。
帰国して6年目のFさんは、この4月から都立高校の1年生になる。
2月、家庭の経済的事情で公立一本を受験した。一校しか受験しないというプレッシャーがあるだろうと、志望校を何ランクも落としての受験だった。しかし結果は不合格。担任から連絡をいただいた。「日本語の問題だと思います。」学校生活の中で何ら問題なく日本語を話しているように見えたが、確かに、作文の中での「てにをは」にも問題はあった。問題文そのものが理解できなかったのではないかというのが先生のお話だった。日常会話と学習の言葉の習得とは別のものだ。
Fさんの父母は中国残留孤児家族。母親は中国で学校に行くことができなかったため、中国語の文字さえ学ぶ機会がなかった。そのため来日後、日本語学習も思うように進まない。Fさんは両親の病院での通訳、役所での通訳などを一人背負ってがんばってきた。
都道府県立高校の中国帰国生徒及び外国籍生徒への高校入試特別措置」が全国で実施されており、特別入学枠などが設けられている。東京都では一律に小学校4年生以上で編入した子に特別入学枠での受験が適用される。家庭でのバックアップがある場合には、4年生以上で可能かもしれない。しかし、帰国者家族の中で、家庭ではほとんど中国語ですごし、学校では何とか遅れをとらないように、周りからその遅れが見えないようにがんばってきている子どもにはとても厳しいものだと思う。大阪では小学校1年生から適用されている。
Fさんは2次試験を受け、見事合格した。
長年、国に翻弄され続ける帰国者とその家族。問題はまだまだ存在してる。問題を少しでも良い方向に向けて解決していき、帰国者の人たちが安心して暮らせるようなやさしい施策が作られていくことは、私たちの暮らしが本当の意味で豊かになることにつながっていくと思う。